彼はまともな人でした。
彼女は素敵な人でした。
そんなの、とっくに知っている。
彼がそんな状況だったなんて。
彼女にとって苦だったなんて。
そんなの、誰も知りえない。
今はただ、悔しいです。
心の整理が付きません。
そんな言葉、よく言えたな。
きっと彼は笑っている。
きっと彼女は恨んでる。
そんな言葉、二度と言うな。
生者が、死者を語るな。
死者の代弁者になったつもりになるな。
他人の痛みはどうしたって、背中を押していたって、隣でずっと見ていたって。
わかりはしないんだ。
わかることはできなかったんだ。
言葉のばんそうこうすらも、貼ることが出来なかった。
凭れられる存在にすら、なれなかった。
手を合わせて、悔いばかりを食んでは吐く。
そうして生きる。と私は身勝手に決めただけ。
忘れぬように、書き留めておいただけ。