頭蓋解剖物語

ボロボロ書きます。剥がれ落ちる私を。

雨を浴びる。

 合羽の上を滑る雨粒、履き慣れないブーツで水溜りを踏み鳴らす。両手を広げれば広がる雨音。傘の中に広がる、雨の世界から切り取った自分だけの世界も好きだが、真っ向から浴びる雨の世界の青さも好きだ。

 見上げる空は深い灰色。星を数える隙間も無い空を見つめる視界の隅で、揺れる窓掛けと人差し指。人の世界にやつらは蔓延る。その窓の内側から、僕の世界を垣間見る。

 私が傘で雨の世界を切り取るように、彼らもまた、言葉で私の世界を切り取る。

 予報を見ればよかったのに。

 折りたたみ傘を忍ばせればよかったのに。

 また始まった黒い雨。「不幸」と「楽観」のfly-by.

 同じ世界に居ないからこそ、感覚の誤差で地が擦れる。「雨を浴びる」に異を申す。

 家の暖かさを知らない。照りつける太陽のような輝かしい絆も、虹の掛かる青い春の空も俺は知らない。されど、雨の浴び方を知っている。肌に張り付く冷たさがあるからこそ、温かいを知覚できる。知らない世界を無理やり切り取って、批判したって出るのは人間性の埃ばかり。

 傘をささない人間に、指をさす必要はない。

 手を差し伸べる必要もない。

 無理に、濡れる必要もない。